帰国子女の進学とは|知っておきたい基礎知識

海外での生活を経験したお子さんの進学は、一般的な進学とは異なる特徴があります。帰国子女の進学では、お子さんが海外で培った語学力や国際感覚を活かしながら、日本の教育システムにスムーズに適応していくことが求められます。近年、多くの学校が帰国子女枠を設けており、お子さんの海外経験を評価する環境が整ってきました。この章では、帰国子女の進学について基本的な知識を整理していきます。

帰国子女とは何か

帰国子女とは、一般的に保護者の仕事の都合などで海外に1年以上滞在し、帰国後に日本の学校に入学・編入する子どもを指します。文部科学省の定義では、「海外勤務者等の子女で、外国において1年以上継続して在留し、帰国後2年以内の者」とされています。

ただし、学校や入試制度によって帰国子女の定義は異なる場合があります。例えば、慶應義塾幼稚舎早稲田実業学校初等部などの名門私立校では、独自の基準を設けていることもあります。また、滞在期間についても、学校によっては2年以上、3年以上と異なる条件を設定している場合があります。

幼児期から小学校低学年での海外滞在は、言語習得の黄金期にあたるため、バイリンガル能力の獲得という点で大きなメリットがあります。一方で、日本語の基礎学力の定着や日本文化への理解という面では、保護者のサポートが重要になってきます。帰国子女としての経験を、お子さんの将来にどう活かしていくかを考えながら、進学準備を進めていくことが大切です。

帰国子女受け入れ制度の現状

日本の教育機関における帰国子女受け入れ制度は、年々充実してきています。私立小学校では約30校以上が帰国子女を積極的に受け入れており、特別な入試枠や編入制度を設けています。

代表的な帰国子女受け入れ校として、東京学芸大学附属大泉小学校暁星小学校聖心女子学院初等科立教小学校などがあります。これらの学校では、帰国子女の海外経験を評価し、英語力や国際感覚を伸ばすカリキュラムを用意しています。

また、インターナショナルスクールという選択肢もあります。西町インターナショナルスクール聖心インターナショナルスクールなどでは、英語での授業を継続しながら、日本での生活に適応できる環境が整っています。ただし、インターナショナルスクールの多くは文部科学省の認可を受けていないため、日本の義務教育を修了したことにならない点には注意が必要です。最近では、東京インターナショナルスクールのように、一条校として認可を受けている学校も増えてきています。

帰国子女ならではの強みと課題

帰国子女のお子さんには、一般的な子どもとは異なる独特の強みがあります。第一に、複数の言語を操る能力です。幼児期から英語環境で過ごしたお子さんは、ネイティブに近い発音や自然な会話力を身につけています。第二に、異文化理解力や柔軟な思考力です。異なる文化の中で生活した経験は、多様な価値観を受け入れる力を育みます。

一方で、課題も存在します。最も大きな課題は日本語力の維持・向上です。特に幼児期から海外で過ごしたお子さんは、日本語の語彙力や読解力が同年代の子どもと比べて不足している場合があります。漢字の読み書き敬語の使い方など、日本語特有の表現に苦手意識を持つケースも少なくありません。

また、日本の学習内容への適応も課題となります。算数の文章題や国語の読解問題では、日本語の理解力が求められます。さらに、日本特有の学校文化や友人関係への適応にも時間がかかることがあります。これらの課題に対しては、帰国前から準備を始め、帰国後も継続的なサポートを行うことが重要です。

進学のタイミングと選択肢

帰国子女の進学タイミングは、お子さんの年齢と発達段階を考慮して決めることが大切です。幼稚園年長から小学1年生での帰国は、日本の教育システムに馴染みやすいというメリットがあります。この時期は、まだ学習内容の差が少なく、友人関係も築きやすい時期です。

小学校中学年(3〜4年生)での帰国は、お子さんの日本語力がある程度確立している場合、スムーズな適応が期待できます。ただし、この時期には算数の単位換算社会科の日本地理など、日本特有の学習内容が増えてくるため、事前の準備が必要です。

小学校高学年(5〜6年生)での帰国では、中学受験を視野に入れた進学準備が重要になります。渋谷教育学園渋谷中学校頌栄女子学院中学校などは帰国子女枠で人気が高く、早めの対策が必要です。また、SAPIX早稲田アカデミーなどの進学塾では、帰国子女向けの特別クラスを設けているところもあります。

編入学という選択肢もあります。年度途中での帰国の場合、多くの私立小学校では編入試験を実施しています。編入試験では、国語・算数の基礎学力面接が主な試験内容となります。

幼児期から始める帰国子女の進学準備

帰国子女の進学を成功させるためには、海外滞在中から計画的な準備を始めることが重要です。幼児期は言語習得の黄金期であると同時に、基礎的な学習習慣を身につける大切な時期でもあります。この時期にどのような準備をしておくかで、帰国後の進学がスムーズになるか、困難を伴うかが大きく変わってきます。この章では、幼児期から始められる具体的な準備方法をご紹介します。

海外滞在中の日本語教育

海外で生活していても、家庭での日本語使用を徹底することが最も基本的で重要な対策です。特に、保護者との会話は必ず日本語で行い、日本語を話す機会を意識的に増やしましょう。食事の時間や就寝前の読み聞かせなど、毎日の習慣の中に日本語を取り入れることが効果的です。

日本語の絵本や児童書を活用することも大切です。福音館書店の「こどものとも」シリーズや偕成社の名作絵本など、年齢に合った良質な日本語の本を定期的に読み聞かせましょう。最近では、海外在住者向けに日本の書籍を配送してくれるサービスも充実しています。また、Kindleなどの電子書籍を活用すれば、海外でも日本の本にアクセスしやすくなります。

日本語補習校の活用も検討しましょう。多くの国には、日本人学校日本語補習授業校があり、週末に日本の教科書を使った授業を受けることができます。ニューヨーク、ロンドン、シンガポールなどの主要都市には、充実した日本語教育機関があります。これらの学校では、国語だけでなく算数や社会も日本語で学べるため、帰国後の学習にスムーズに繋がります。

バイリンガル育児のポイント

OPOL(One Parent One Language)方式は、バイリンガル育児の代表的な方法です。父親は日本語、母親は英語というように、それぞれの保護者が一つの言語で一貫して話しかける方法です。この方式により、お子さんは自然に二つの言語を区別して習得していきます。

ただし、幼児期のお子さんにとって、母語(第一言語)の確立が何より重要です。多くの言語学者は、母語がしっかり確立していない状態で複数の言語に触れると、どの言語も中途半端になる「セミリンガル」のリスクがあると指摘しています。そのため、3歳頃までは日本語を中心に言語発達を促し、その後英語の比重を増やしていく方法が推奨されています。

言語の使い分けを意識的に行うことも大切です。場所による使い分け(家では日本語、外では英語)や時間による使い分け(午前中は日本語、午後は英語)など、お子さんが理解しやすいルールを設定しましょう。また、両方の言語で同じ内容の本を読む、同じアニメを異なる言語で見るなど、内容の関連性を持たせることで、語彙力を効率的に伸ばすことができます。

通信教育・オンライン学習の活用

海外在住でも利用できる通信教育サービスは、帰国子女の学習準備に非常に有効です。こどもちゃれんじ(ベネッセ)は、海外受講サービスを提供しており、年齢に応じた教材が毎月届きます。しまじろうと一緒に日本語や数の概念を学べるため、幼児期のお子さんにとって親しみやすい教材です。

Z会幼児コースも海外配送に対応しており、思考力を育てる良質な問題が特徴です。特に、年長コースでは小学校入学準備として、ひらがな・カタカナの読み書きや簡単な計算など、基礎学力を身につけることができます。

オンライン学習プラットフォームも充実してきています。スマイルゼミはタブレット学習で、ゲーム感覚で楽しく学習できるのが特徴です。海外からでもインターネット環境があれば利用可能です。また、ワンダーボックス(旧シンクシンク)は、STEAM教育を取り入れた思考力育成プログラムで、日本語での論理的思考力を養うことができます。

さらに、オンライン家庭教師も選択肢の一つです。リップルキッズパークグローバルクラウンなどは、帰国子女向けのコースを設けており、日本語での学習サポートを受けることができます。時差に配慮したスケジュール調整も可能です。

日本文化への触れ合い

海外にいながら日本の季節行事を大切にすることで、お子さんの日本文化への理解を深めることができます。お正月には年賀状を書く、ひな祭りには雛人形を飾る、七夕には短冊に願いを書くなど、日本の伝統行事を家庭で実践しましょう。これらの経験は、帰国後の学校生活でも役立ちます。

日本のアニメや童謡も、日本語学習と文化理解の両面で有効です。アンパンマンドラえもんとなりのトトロなどの作品は、日本語の自然な表現や日常会話を学ぶ良い教材になります。最近では、NetflixAmazon Prime Videoで日本のコンテンツにアクセスしやすくなっています。

可能であれば、一時帰国を活用して日本の生活を体験させることも重要です。祖父母の家に滞在し、日本の幼稚園や保育園の体験入園をする、地域の図書館やプレイグループに参加するなど、日本社会との接点を持つ機会を作りましょう。また、日本の友人や親戚との交流を通じて、日本語でのコミュニケーション能力を維持することができます。

帰国子女受け入れ校の選び方

帰国子女のお子さんにとって、どの学校を選ぶかは将来に大きく影響する重要な決断です。学校選びでは、お子さんの語学力や性格、将来の進路希望などを総合的に考慮する必要があります。また、帰国子女受け入れに積極的な学校であっても、その教育方針や環境は様々です。この章では、お子さんに最適な学校を見つけるための具体的なポイントをご紹介します。

公立校と私立校の違い

公立小学校のメリットは、地域に根ざした教育を受けられることと、経済的負担が少ないことです。学区内の友人と一緒に通学でき、地域コミュニティとの繋がりも自然に築けます。また、多様な家庭環境の子どもたちと触れ合うことで、社会性を育むことができます。

一方で、公立校では帰国子女向けの特別なサポート体制が整っていない場合が多いです。英語力の維持や伸長については、学校外での取り組みが必要になります。ただし、国際理解教育に力を入れている公立校も増えており、地域によっては英語特区として英語教育を充実させている学校もあります。例えば、東京都品川区や大阪市などでは、公立校でも質の高い英語教育を受けることができます。

私立小学校は、帰国子女の受け入れ体制が整っており、お子さんの海外経験を評価してくれる環境があります。多くの私立校では、取り出し授業(習熟度別クラス)や英語イマージョン教育を提供しており、英語力を維持しながら日本の学習も進められます。

代表的な帰国子女受け入れ私立校として、洗足学園小学校玉川学園小学部東京女学館小学校などがあります。これらの学校では、帰国子女の在籍率が高く、お子さんが孤立せずに学校生活を送れる環境が整っています。ただし、私立校は学費が高額になるため、経済的な準備も必要です。年間100万円以上の学費がかかる学校も珍しくありません。

インターナショナルスクールという選択

インターナショナルスクールは、英語力を維持・向上させたいご家庭にとって魅力的な選択肢です。授業は基本的に英語で行われ、国際バカロレア(IB)などの国際的な教育プログラムを採用している学校が多いです。

東京都内の代表的なインターナショナルスクールには、アメリカンスクール・イン・ジャパンブリティッシュスクール・イン・トウキョウカナディアン・インターナショナルスクールなどがあります。これらの学校では、多国籍な環境の中で、グローバルな視点を持った教育を受けることができます。

ただし、インターナショナルスクールには注意点もあります。第一に、文部科学省の認可を受けていない学校が多く、日本の義務教育を修了したことにならない可能性があります。中学や高校への進学時に制約が生じる場合があるため、事前に確認が必要です。第二に、学費が非常に高額です。年間200万円〜300万円以上かかる学校も多く、入学金も別途必要です。

最近では、一条校認定のインターナショナルスクールも増えてきています。ローラス インターナショナルスクール開智望小学校などは、日本の学校教育法に基づく認可を受けながら、英語での教育を提供しています。これらの学校では、日本の義務教育を修了しながら、高い英語力を維持できるメリットがあります。

学校見学のチェックポイント

学校選びでは、必ず実際に学校を訪問して、雰囲気や環境を確認することが大切です。まず確認したいのは、帰国子女の受け入れ実績です。帰国子女が何名在籍しているか、どのような国からの帰国が多いか、過去の進学実績はどうかなどを質問しましょう。

英語教育のカリキュラムも重要なチェックポイントです。週に何時間英語の授業があるか、ネイティブ教師が担当しているか、習熟度別クラスがあるかなどを確認します。また、取り出し授業の有無も確認しましょう。英語力の高い帰国子女向けに、特別な英語プログラムを提供している学校もあります。

施設面では、図書室の蔵書(英語の本がどの程度あるか)、ICT環境(タブレットやパソコンの活用状況)、校庭や体育館の広さなども確認しておきましょう。お子さんが快適に過ごせる環境かどうかを見極めることが大切です。

また、在校生や保護者の様子を観察することも有益です。学校説明会や公開授業に参加して、実際の授業風景や子どもたちの表情を見てみましょう。可能であれば、帰国子女の保護者に話を聞く機会を作ると、より具体的な情報を得ることができます。

お子さんの個性に合った学校選び

学校選びで最も大切なのは、お子さんの個性や特性に合っているかという視点です。活発で社交的なお子さんには、様々な活動や行事が充実している学校が向いています。一方、落ち着いて学習に取り組むことが好きなお子さんには、少人数制できめ細かい指導を行う学校が適しているでしょう。

英語力のレベルも考慮が必要です。海外でインターナショナルスクールに通っていたお子さんと、日本人学校に通っていたお子さんでは、英語力に大きな差があります。お子さんの現在の語学レベルに合った学校を選ばないと、授業についていけなかったり、逆に物足りなく感じたりする可能性があります。

将来の進路も視野に入れましょう。国内の大学進学を目指すのか、海外大学を目指すのかによって、選ぶべき学校は変わってきます。渋谷教育学園幕張小学校広尾学園小石川などは、国内外の大学進学に強い実績を持っています。また、IBプログラムを提供している学校は、海外大学進学に有利です。

さらに、通学の負担も考慮しましょう。特に小学校低学年のお子さんにとって、長時間の通学は体力的な負担が大きくなります。通学時間は片道1時間以内が理想的です。また、通学路の安全性や、電車の混雑具合なども確認しておくとよいでしょう。

帰国子女入試の特徴と対策方法

帰国子女入試は、一般入試とは異なる特徴を持っています。多くの学校では、お子さんの海外経験や語学力を評価する独自の試験を実施しており、その内容は学校によって大きく異なります。また、試験時期や出願資格も一般入試とは異なるため、事前の情報収集と計画的な準備が必要です。この章では、帰国子女入試を成功させるための具体的な対策方法をご紹介します。

帰国子女入試の基本的な流れ

帰国子女入試は、主に9月〜12月に実施されることが多いです。これは、海外の学年暦(多くの国で6月が学年末)に合わせた時期設定となっています。一般入試より早い時期に行われるため、帰国後すぐに受験準備を始める必要があります。

出願資格として、多くの学校では海外滞在期間1年以上、帰国後2年以内という条件を設けています。ただし、慶應義塾横浜初等部では海外滞在期間2年以上、学習院初等科では帰国後1年以内など、学校によって条件が異なります。事前に各校のウェブサイトや募集要項で確認することが重要です。

試験科目は学校によって様々ですが、一般的には以下の内容が含まれます。基礎学力テスト(国語・算数)、面接(親子面接または本人面接)、作文(日本語または英語)、英語力テスト(筆記試験またはインタビュー)などです。学校によっては、運動テスト行動観察を実施するところもあります。

帰国子女の中学受験については、以下の記事をご参照ください。

帰国子女の中学受験!夏期講習情報や受験対策のポイントを解説|塾選(ジュクセン)

国語と算数の基礎学力対策

国語の対策では、まず日本語の読解力を強化することが最優先です。帰国子女のお子さんの多くは、日常会話はできても、語彙力読解力が同学年の子どもより不足しているケースがあります。特に、抽象的な概念を表す言葉や、慣用句、ことわざなどは意識的に学習する必要があります。

具体的な対策としては、毎日の音読練習が効果的です。学年相応の文章を声に出して読むことで、読解力と語彙力が同時に向上します。また、読解問題集を活用して、文章の要点を掴む練習をしましょう。四谷大塚の「予習シリーズ」や日能研の「マスター1095題」などは、段階的に力をつけられる良質な教材です。

算数では、日本特有の単位(リットル、デシリットル、坪、畳など)や文章題への対応が課題となります。海外では異なる単位系統を使っている国も多いため、日本の単位に慣れておく必要があります。また、算数の文章題は、日本語の読解力も同時に求められるため、問題文を正確に理解する練習が必要です。

計算力については、公文式そろばんなどで基礎を固めておくと有利です。また、図形問題では、折り紙積み木などの具体物を使った学習も効果的です。帰国子女専門の塾であるJOBAena国際部では、帰国子女の特性に合わせた算数指導を行っています。

英語力の証明と活用方法

帰国子女入試では、英語力がプラス評価される場合が多いです。英語力を客観的に示すために、英語資格試験のスコアを取得しておくことをおすすめします。多くの学校が評価対象としているのは、英検(実用英語技能検定)、TOEFL Primary/Juniorケンブリッジ英検などです。

小学校低学年であれば、英検3級〜準2級程度の取得を目指しましょう。小学校高学年では、英検2級以上を持っていると有利になります。ただし、資格試験のスコアだけでなく、実際のコミュニケーション能力も重視されます。面接での英語インタビューでは、自然な会話力や表現力が評価されます。

英語の作文課題がある場合、エッセイライティングの練習が必要です。海外の学校で学んだライティングスキルを活かしながら、日本の学校が求めるテーマ(志望動機、将来の夢、海外での経験など)に沿った内容を書けるように準備しましょう。オンライン英会話英作文添削サービスを活用して、定期的にフィードバックを受けることが効果的です。

面接対策と志望動機の準備

面接は帰国子女入試で非常に重要な要素です。多くの学校では、親子面接が実施され、お子さんの成長過程や家庭の教育方針、海外での経験などが質問されます。面接時間は15分〜30分程度が一般的です。

お子さんへの質問例としては、「海外で一番楽しかったことは何ですか」「日本と海外の学校の違いはどんなところですか」「将来の夢は何ですか」「この学校のどんなところに魅力を感じましたか」などがあります。これらの質問に対して、具体的なエピソードを交えながら答えられるように準備しておきましょう。

保護者への質問では、「お子さんの海外での成長をどう評価していますか」「帰国後、どのようなサポートをする予定ですか」「本校の教育方針についてどう思われますか」などが聞かれます。学校のウェブサイトや説明会資料をしっかり読み込み、学校の教育理念を理解しておくことが大切です。

面接では、服装も重要です。お子さんは清潔感のある服装(男の子は紺のブレザーとズボン、女の子はワンピースやブラウスとスカート)、保護者は紺やグレーのスーツが無難です。また、時間厳守言葉遣いにも注意しましょう。模擬面接を複数回行い、自然な受け答えができるように練習することをおすすめします。

バイリンガル教育と日本の学習の両立

帰国後、英語力を維持しながら日本の学習を進めていくことは、多くのご家庭が直面する課題です。特に、小学校に入学すると、日本語での授業や宿題に追われ、英語に触れる時間が減ってしまうことがあります。一方で、せっかく身につけた英語力を失わないようにするには、継続的な取り組みが必要です。この章では、バイリンガル教育と日本の学習を両立させるための具体的な方法をご紹介します。

英語力維持のための家庭学習

英語力を維持するための最も基本的な方法は、毎日英語に触れる時間を確保することです。理想的には、1日30分〜1時間程度、英語での読書や会話、視聴の時間を設けましょう。短時間でも毎日継続することが、語学力維持の鍵となります。

英語の読書習慣を維持することは特に重要です。お子さんの興味やレベルに合った本を選び、週に2〜3冊のペースで読み進めましょう。ScholasticOxford Reading Treeなどのシリーズは、段階的にレベルアップできる良質な教材です。また、電子書籍サービスのEpic!Raz-Kidsを活用すれば、日本にいながら多様な英語の本にアクセスできます。

英語での映像コンテンツも効果的です。ただし、単に視聴するだけでなく、内容について家族で話し合う時間を持つことで、より深い理解と表現力の向上に繋がります。ディズニープラスNetflixでは、英語音声と英語字幕を同時に表示できるため、リスニングとリーディングの両方を鍛えることができます。

英語教室・英会話スクールの選び方

帰国子女向けの英語教室は、英語力維持に大きく貢献します。ただし、一般的な英会話教室では物足りない場合が多いため、帰国子女専門クラスアドバンスクラスを設けている教室を選びましょう。

東京都内では、Kids InternationalキャタルGO Schoolなどが帰国子女向けプログラムを提供しています。これらの教室では、4技能(読む・書く・聞く・話す)をバランスよく伸ばすカリキュラムが組まれており、学年相応の英語力を維持できます。

オンライン英会話も選択肢として有効です。ネイティブキャンプCambly Kidsなどでは、ネイティブスピーカーとの会話練習ができます。通学の負担がなく、時間の融通が利くため、忙しい小学生にも続けやすいメリットがあります。週2〜3回、1回25分程度のレッスンを継続することで、会話力を維持できます。

また、英語での習い事も検討してみましょう。英語でダンス、アート、プログラミングなどを学べる教室も増えています。英語を「学ぶ」のではなく「使う」機会を作ることで、より実践的な語学力が身につきます。

日本語学習の強化ポイント

帰国子女のお子さんにとって、日本語の語彙力強化は最優先課題の一つです。特に、抽象的な概念を表す言葉(感情、状態、関係性など)や学習用語(算数の「商」「余り」、理科の「蒸発」「溶解」など)は、意識的に学習する必要があります。

効果的な方法として、語彙カードを作成する方法があります。新しく学んだ言葉を、例文と一緒にカードに書き、毎日数枚ずつ復習します。また、辞書を引く習慣をつけることも重要です。電子辞書やスマートフォンの辞書アプリを使って、わからない言葉をその場で調べる習慣を身につけましょう。

漢字学習も計画的に進める必要があります。学年配当漢字を確実に習得するために、漢字ドリルを活用しましょう。下村式漢字練習陰山メソッドなど、効率的に漢字を覚えられる教材がおすすめです。また、漢字検定に挑戦することで、目標を持って学習を進めることができます。

日本語の読書習慣も大切にしましょう。最初は絵本や易しい児童書から始め、徐々に読む本のレベルを上げていきます。青い鳥文庫角川つばさ文庫などは、小学生が読みやすい良質な本が揃っています。読書の後、内容について親子で話し合うことで、読解力と表現力の両方を伸ばせます。

学習時間の効果的な配分

バイリンガル教育と日本の学習を両立させるには、学習時間の配分を工夫する必要があります。小学校低学年では、平日は1日2時間程度、週末は3〜4時間程度の家庭学習時間を確保するのが目安です。この時間を、日本語学習と英語学習にバランスよく配分しましょう。

一つの方法として、曜日ごとに重点を変えるやり方があります。例えば、月曜日と水曜日は算数と国語を重点的に、火曜日と木曜日は英語を重点的に、金曜日は復習の日とするなど、予定を立てて学習を進めます。ただし、英語は毎日少しでも触れることが重要なので、英語重点日以外でも、最低15分程度は英語の本を読む時間を確保しましょう。

朝学習を取り入れることも効果的です。登校前の15〜20分間を学習時間に充てることで、一日のリズムが整います。朝は頭がすっきりしているため、計算練習漢字練習英語の音読など、基礎的な学習に適しています。

また、隙間時間の活用も大切です。通学時間や待ち時間には、語彙カードの復習やオーディオブックの聴取など、ちょっとした学習を取り入れましょう。最近では、スマホアプリを使った学習も充実しており、楽しみながら隙間時間を有効活用できます。

帰国後の学習サポートと塾選び

帰国後、お子さんが日本の学習にスムーズに適応できるよう、適切なサポート体制を整えることが重要です。学校の授業だけでは不十分な場合、学習塾や家庭教師の力を借りることも選択肢の一つです。しかし、帰国子女に適した塾選びには、いくつかのポイントがあります。この章では、帰国後の学習サポートについて、具体的な方法をご紹介します。

帰国子女向け学習塾の特徴

帰国子女専門塾は、帰国子女特有の課題を理解し、効果的な指導を行っています。代表的な塾として、JOBA(日本海外生活者協会)があります。JOBAは、海外在住時からオンラインで授業を受けられ、帰国後も継続して通塾できるシステムを持っています。国語・算数の基礎学力向上と、英語力の維持を両立したカリキュラムが特徴です。

ena国際部も帰国子女に人気の塾です。渋谷、吉祥寺、横浜などに教室があり、帰国子女入試対策と、帰国後の学習フォローを専門に行っています。特に、国語の読解力強化算数の文章題対策に定評があります。また、定期的に実施される模擬試験で、お子さんの学力を客観的に把握できます。

トリプレット・イングリッシュ・スクールは、英語力維持に特化した塾です。帰国子女の高い英語力をさらに伸ばし、英検1級TOEFL高得点を目指すプログラムを提供しています。個別指導形式で、お子さんのレベルに合わせたカリキュラムを組んでもらえます。

個別指導と集団指導の選択

個別指導のメリットは、お子さんの学習ペースに合わせた指導が受けられることです。帰国子女の場合、日本語力や学習進度に個人差が大きいため、個別指導が適している場合が多いです。苦手分野を重点的に学習したり、得意分野をさらに伸ばしたりと、柔軟なカリキュラムを組めます。

個別教室のトライ東京個別指導学院などでは、帰国子女専門のコースを設けており、経験豊富な講師が担当してくれます。また、オンライン個別指導も選択肢として有効です。メガスタ家庭教師のトライでは、全国どこからでも質の高い個別指導を受けることができます。

一方、集団指導のメリットは、同じような境遇の友人ができることと、競争心が刺激されることです。帰国子女専門の集団塾では、お子さんが孤立感を感じることなく、仲間と切磋琢磨しながら学習できます。また、集団授業では、発表する機会グループワークがあり、コミュニケーション能力も育まれます。

お子さんの性格や学習スタイルに合わせて、個別指導と集団指導を選びましょう。内向的で質問しにくいお子さんには個別指導が、社交的で競争を好むお子さんには集団指導が向いています。また、両方を併用する方法もあります。例えば、基礎学力は集団塾で、苦手科目は個別指導でフォローするといった使い分けも効果的です。

家庭でできる学習サポート

塾に通うだけでなく、家庭での学習サポートも非常に重要です。保護者ができることとして、まず学習環境の整備があります。お子さんが集中して学習できる静かなスペースを確保し、必要な文房具や参考書を揃えましょう。また、学習計画の作成を一緒に行うことで、お子さんの自主性を育てることができます。

宿題のチェックも保護者の役割です。ただし、答えを教えるのではなく、お子さんが自分で考えられるようにヒントを与える程度にとどめましょう。特に、音読の聞き役になることは、国語力向上に大きく貢献します。毎日10分程度、お子さんの音読を聞いて、感想を伝えてあげましょう。

学習アプリの活用も有効です。スタディサプリ小学講座では、プロ講師の授業動画を見ながら、自分のペースで学習できます。また、Think!Think!トドさんすうなどのゲーム感覚で学べるアプリは、楽しみながら思考力を育てることができます。

さらに、博物館や科学館への訪問など、体験型学習の機会を作ることも大切です。日本科学未来館国立科学博物館などでは、子どもの好奇心を刺激する展示が豊富にあります。実物に触れることで、教科書の知識が生きた学びに変わります。

学習の進捗管理と評価

お子さんの学習状況を定期的に把握するため、学習記録をつけることをおすすめします。どの教科をどのくらい学習したか、どの問題ができて、どの問題が難しかったかを記録することで、苦手分野が明確になります。ノートやアプリを使って、簡単に記録をつける習慣をつけましょう。

定期的なテストで学力を確認することも重要です。学校のテストだけでなく、全国模試を受験することで、全国の中でのお子さんの位置を把握できます。四谷大塚の全国統一小学生テスト日能研の全国公開模試などは、無料または低価格で受験でき、詳細な成績表が返却されます。

ただし、テストの結果だけで評価するのではなく、日々の努力や成長を認めてあげることが大切です。点数が低くても、前回より改善した点や、頑張った過程を褒めましょう。お子さんの自己肯定感を育てることが、長期的な学習意欲の維持に繋がります。

また、定期的な面談を塾の先生と行い、学習状況や今後の方針について相談しましょう。塾と家庭が連携してお子さんをサポートすることで、より効果的な学習が可能になります。特に、帰国子女の場合は、英語力の維持と日本語力の向上という両方の課題について、専門家のアドバイスを受けることが有益です。

帰国子女の進学で大切にしたい心のケア

帰国子女のお子さんは、言語や学習面だけでなく、心理的にも大きな変化を経験します。慣れ親しんだ海外の環境から離れ、新しい文化や友人関係に適応していくことは、お子さんにとって大きなストレスとなることがあります。この時期に適切な心のケアを行うことで、お子さんは安心して新しい環境に適応していくことができます。この章では、帰国子女の心のケアについて、具体的な方法をご紹介します。

環境変化への適応をサポート

帰国直後のお子さんは、カルチャーショックを経験することがあります。これは、海外から日本に戻るときにも起こる「逆カルチャーショック」と呼ばれる現象です。日本での生活様式、学校のルール、友人との付き合い方などが、海外とは大きく異なるため、戸惑いや違和感を感じることは自然なことです。

保護者ができることは、お子さんの気持ちを受け止めることです。「日本は窮屈だ」「前の学校が良かった」などの発言があっても、否定せずに、まずは共感してあげましょう。「そう感じるのは当然だね」「新しい環境に慣れるのは時間がかかるよね」と、お子さんの気持ちを認めてあげることが大切です。

また、徐々に適応していくことを前提に、焦らないことも重要です。3ヶ月から半年程度は、適応期間と考えて、お子さんのペースを尊重しましょう。無理に「日本に慣れなさい」と急かすのではなく、少しずつ新しい環境に馴染んでいけるようサポートします。

友人関係づくりのサポート

帰国子女のお子さんが直面する大きな課題の一つが、友人関係の構築です。日本の学校では、すでにクラスメイトの間に友人関係が出来上がっており、新しく入ってきたお子さんが仲間に入りにくい場合があります。また、海外での経験や英語力が、逆に周囲から「浮いてしまう」原因になることもあります。

保護者ができるサポートとして、クラスメイトとの交流の機会を作ることがあります。お子さんの誕生日会を開いて何人かのクラスメイトを招待したり、休日に公園で遊ぶ約束をしたりと、学校外での交流の場を設けましょう。また、習い事を通じて友人を作ることも効果的です。スポーツクラブや音楽教室など、共通の興味を持つ仲間と出会える場所を提供してあげましょう。

もし、お子さんがいじめからかいの対象になっている場合は、早急な対応が必要です。担任の先生に相談し、学校と連携して問題解決に取り組みましょう。また、お子さんには「あなたは悪くない」「困ったときはいつでも話していいよ」と伝え、安心感を与えることが大切です。

アイデンティティの形成を支える

帰国子女のお子さんは、「自分はどこに属しているのか」というアイデンティティの問題に直面することがあります。海外では「日本人」として扱われ、日本では「帰国子女」として特別視されることで、自分の居場所がわからなくなることがあります。

このような時期には、お子さんの両文化を尊重する姿勢が大切です。「日本人なんだから日本のやり方に従いなさい」と一方的に押し付けるのではなく、「海外で学んだことも、日本で学ぶことも、どちらも大切だね」と、両方の文化を認めてあげましょう。お子さんがバイカルチュラル(二つの文化を持つ人)であることをポジティブに捉えられるよう支援します。

また、同じような境遇の友人との交流も有益です。帰国子女コミュニティやイベントに参加することで、お子さんは「自分だけじゃないんだ」という安心感を得られます。帰国子女アカデミーTGGテラス(東京グローバルゲートウェイ)などでは、帰国子女向けのプログラムやイベントが定期的に開催されています。

保護者自身のストレスケア

お子さんの帰国に伴い、保護者自身もストレスを感じることがあります。海外での生活から日本の生活に戻ることで、生活様式や人間関係が大きく変わります。また、お子さんの教育や進学について、様々な決断を迫られることも心理的負担になります。

保護者自身が心身ともに健康であることが、お子さんを支える基盤となります。無理をせず、自分の時間を持つことも大切にしましょう。趣味の時間、友人との交流、リラックスできる時間を意識的に確保することで、心の余裕が生まれます。

また、同じ境遇の保護者とのネットワークを作ることも有益です。帰国子女の保護者会やオンラインコミュニティに参加することで、情報交換や悩みの共有ができます。Facebookの帰国子女保護者グループや、ママリなどの育児コミュニティには、有益な情報が集まっています。

もし、お子さんや保護者自身が深刻なストレス適応障害の症状を感じている場合は、専門家に相談することをためらわないでください。スクールカウンセラー児童精神科医臨床心理士などの専門家は、帰国子女特有の課題に対応した支援を提供してくれます。早めの相談が、問題の深刻化を防ぎます。